怪談牡丹灯籠

 

 寛保3年4月11日、湯島天神の祭礼当日、本郷三丁目の刀屋で、旗本の飯島平太郎は酒に酔って無礼を働いた浪人黒川孝蔵を斬る。「斜に三つに切られ、亀井戸(亀戸)のくず餅のようになったしまった」。

 平太郎は家督を継ぎ、平左衛門と名を改めた。奥方は器量好しの一人娘お露を生んでまもなく他界したので、女中お国を妾に直した。
 お国は、邪魔なお露を十六の時、女中のお米をつけて柳島の寮に追いやったが、亀戸の梅見帰りに立ち寄った太鼓持ち医者山本志丈の連れの浪人萩原新三郎に深く恋慕する。「貴方また来て下されなければ、私死んでしまいますよ」。

 飯島平左衛門は新らたに召し抱えた若党・孝助の身の上を知る。孝助は平左衛門が手に掛けた黒川孝蔵の息子で、父の仇を捜し歩いていた。お国は隣家の旗本の伜、宮野辺源次郎と密通、平左衛門暗殺を謀る。それを知って孝助は心を痛める。

「新三郎の家にお露とお米が訪れる」。(御札はがし

 隣家の不義をはたらく宮野辺源次郎と思ってヤリで突いた孝助は、それが主君平左衛門なので驚く。平左衛門は覚悟の上、仇討ちをさせた旨、物語り、隣家に行って宮野辺源次郎の足に傷を負わせ、息絶える。
 孝助は、養子に望まれていた相川新兵衛の家へ立ち退き、婚礼の後、駆け落ちした主人の仇・源次郎、お国を尋ね旅に出る。

「伴蔵夫婦は栗橋宿で荒物屋を始める」。(栗橋宿

 殺したおみねの死霊が女中に取り憑き、「伴蔵さん貝殻骨から乳の下に掛けてズブズブと伴蔵さんに突き通されたときの痛かったこと」。医者として来た山本志丈に知られ、伴蔵二人は盟約を交わす。
 女房お国の事を言い立てて門口屋伴蔵をゆすりに来た宮野辺源次郎は、伴蔵に追い返される。(関口屋強請)

 根津に埋めた海音如来を掘り出しに来た伴蔵と志丈は、御用となる。

 人相見白翁堂勇斎(はくおうどう ゆうさい)の邸で、孝助は八卦見に来た生母りえと対面する。母の再婚先は宇都宮樋口屋で、お国は先妻の娘だったと分かる。お国は性が悪く、手に負えない娘だったので、武家に見習い奉公に出していた。
 母りえの手引で孝助は宇都宮に行き、その夜、樋口屋へ仇討ちに行く。しかし、婚家への義理立てから、お国、宮野辺源次郎を逃がして、孝助にも同じ道を教え、母は自害する。
 孝助は、二人を追い、目出度く本懐を達し、孝助の一子孝太郎をもって飯島家を再興する。

 それから孝助は主人飯島平左衛門のため、お露のため、萩原新三郎のため、「谷中新幡随院に濡れ仏を建立いたした」という。

 「牡丹灯籠人物相関図」 圓朝ざんまい 森まゆみ著

 文久元年(1861)、この牡丹灯籠が完成する。あのいじめられた師匠二代目円生が同年8月死去し、兄の永泉も暮れに旅立ってしまった。明治はそこまで来ている。明治元年(1868)、圓朝三十歳になっていた。

 

牡丹灯籠・お札はがし』に戻る

牡丹灯籠・栗橋宿』に戻る

 

 

 

SEO [PR] !uO z[y[WJ Cu