落語「御慶」の舞台を歩く
 

柳家小さんの噺、「御慶(ぎょけい)」によると。
 

 暮れの28日、屋根屋の”八つぁん”が富に当った夢を見たので”富”を買いたいと言い出す。買う金がどこにもないので、親の形見の女房が着ている半纏を強引に質入れして、1分を借り出し湯島の天神に駆けつける。買う札は夢のお告げで、「ハシゴの先に鶴が止まっているのを見たから、鶴は千年生きるので”千”ととめて、ハシゴだから”八四五”で”鶴の千八百四十五”をもらおう。」「たった今売り切れました」。がっかりしながら歩いていると、易者が見て占ってあげると呼び止める。それによると「ハシゴは下るものではなく、主に登るものだから、八四五でなく”五四八”である」という。見料も払わず”鶴の千五百四十八”を買いに行くと残っていたので、喜んで買い求める。
 境内にはいると富が始まっていた。最後の大富、壱千両に見事当たった。今だと手数料を差し引かれるが、それでも八百両を持って帰って、離縁されそうになっていた女房に見せ、喜ばせる。
 さっそく大家の所に行って、貯めた家賃八つを払い、祝儀をはずんで喜ばれる。易者にも払い、誂えは間に合わないので市ヶ谷の古着屋”あまざけ屋(屋号)”に行って、裃(かみしも)から下着まで一式を揃えた。近所で脇差しも買った。大晦日は豪勢な年越しをして、女房に手伝ってもらい、裃も着付けた。日の明けるのももどかしく出かけ、一番に大家さんに挨拶に行く。
 白扇を前に差してもらい、長い祝辞は言えないので、簡単な挨拶を教えてもらう。おめでたいことば「御慶」と、上がって行きなさいと言われたら、「永日(えいじつ)」と言って、引き下がりなさいと教えられる。
 近所の家に年始に回り、「御慶」と「永日」を繰り返し、みんなの目を白黒させる。 路上であった友人にも「御慶」と「永日」を発する始末。 3人組には3回続けて「御慶」「御慶」「御慶」とどなり、相手が何のことか分からずききかえすと「御慶(ぎょけい=どけい=どこへ)と言ったんだ」、「恵方(えほう)参りに行ったんだ」。
 


 小さんは八つぁんの「御慶」と「永日」を頭のてっぺんから発する声で、言っていた。八つぁんも意味も分からず只怒鳴っていたので、始めて聞く回りの人たちは八つぁんの正装に反比例してビックリしたのでしょう。オチのところも江戸っ子風に巻き舌で言うと「御慶」が”どけ〜ェ”と聞こえる、ところから来ています。
【永日】(えいじつ)とは、別れの挨拶や手紙の終りなどに用いる語葉で、「いずれ他日ゆるゆる会おう」の意味です。「家に上がってゆっくりしていきなさい」の返事として「今は失礼します」との意味。八つぁんにもう一度、意味を教えておかなくてはねぇ〜。路上じゃー、誰も家に上がれなんて言うはずがないのにね〜。

1.江戸の三富
 
谷中の感応寺(台東区谷中7−14−8)、湯島の天神(湯島天神、文京区湯島3−30−1)、目黒の不動(=龍泉寺、目黒区下目黒3−20−26)と言われています。噺のマクラで小さんがふっていた。
 

.千両富
 
1分(ぶ)が千両になる、非常に射幸心の強いくじで、何回か禁止になっている。通常、最高金額は百両が普通であった。1分は1/4両、職人の手間で1週間分ぐらいの価値があった。
 今も年末ジャンボ宝くじに、大勢の人が並んで買っている。いろいろ縁起を担いで買う場所や時間や方角を考えて買い求めているようだ。あなたも買いました?当たりましたか?
 

3.恵方参り
 
【恵方】(えほう) 古くは正月の神の来臨する方角。のちに暦術が入って、その年の歳徳神のいる方角。
 【恵方神】(えほうがみ)=【歳徳神】(としとくじん) 暦注の一。その年の福徳をつかさどる神。この神の在る方角を明(あき)の方または恵方といい、万事に吉とする。としとくさん。 (以上広辞苑より)

と言うことで、
  【恵方参り】(えほうまいり)とは、正月元日にその年の恵方に当る神社に参詣すること。恵方詣。 新年 。浄、夕霧阿波鳴渡「天満とやらの明神様へ―」 (広辞苑より)

平成13年正月三が日の初詣参拝客、ベスト10(警視庁調べ)

1. 明治神宮(東京)     326万人
2. 成田山新勝寺(千葉)  289万人
3. 川崎大師(神奈川)    285万人
4. 伏見稲荷大師(京都)  255万人
5. 住吉大社(大阪)     243万人
6. 熱田神宮(愛知)     217万人
7. 鶴岡八幡宮(神奈川)  198万人
8. 太宰府天満宮(福岡)  196万人
9. 大宮氷川神社(埼玉)  183万人
10.浅草寺(東京)      171万人


  舞台の三富を歩く
 

先ずは、谷中から出発、
◇谷中の感応寺
(現在名称変更し、護国山天王寺、台東区谷中7−14−8)、元禄12年(1699)幕府の命令で、感応寺は天台宗に改宗した。ついで天保4年(1833)、天王寺と改めた。所在地は同じ。
 日蓮上人はこの地の住人関長耀(せき ながてる)の家に宿泊した折り、自分の像を刻んだ。長耀は草庵を結び、その像を奉安した。天王寺草創期の話で、室町時代、応永(1394〜1427)頃の創建という。

 名前が変わってしまったので、今はどこを探しても昔の感応寺は有りません。まず、電話帳で調べて同名の「下谷感応寺」を探し当てて伺ったら、全然関係のないお寺さんでした。それもそのはず”谷中”と”下谷”が違っています。(1字違いでも全く別の所に行ってしまうのですね)ああ、なんたることや。次に谷中の感応寺さんへ。谷中に、同名のお寺さんがありました。ウキウキして伺ったら、同名異寺。その昔神田から引っ越しされてきたそうです。有難いことに、そこで谷中の感応寺は近所の天王寺であることを親切に教えていただく(私のような尋ね人が、過去にも居るのでしょう)。そして、谷中墓地のはずれ(JR日暮里駅脇)にある、天王寺へ無事到着。広い境内と、落ち葉ひとつ無く掃き清められた清々しいたたずまいは気品良さを漂わせています。富くじに関する資料は無いそうです。残念。

◇湯島の天神(湯島天神、文京区湯島3−30−1)、14話「初天神」や31話「柳田格之進」で詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。

 正月の準備が始まった境内の、宝物殿で聞いたところ、富くじに関する資料はなにも無いとのこと、残念。境内にも石碑とかの記念物はなにも無ありません。

◇目黒の不動(=龍泉寺、目黒区下目黒3−20−26)、三不動・五色不動のひとつ。
【三不動】(さんふどう)
1.大津三井寺の黄不動と高野山明王院の赤不動と京都青蓮院(しょうれんいん)の青不動との総称。いずれも不動の画像として図像上・表現上に特色をもつ。
2.目黒不動と目白不動と目赤不動との総称。いずれも江戸の名所。(1.2広辞苑より)
3.「日本三大不動」、熊本の木原不動尊、千葉の成田不動尊、とここの目黒不動尊(目黒不動説)
「関東三不動」、目黒、成田、日野の高幡不動尊(目黒不動説)
写真;目黒不動境内
【五色不動】(ごしきふどう)
目黒・目白・目赤・目黄・目青のひとつとして江戸城守護、江戸城五方の方難除け、江戸より発する五街道の守護に当てられ、江戸随一の名所になった。

 目黒不動の創建は今から一千百余年前の平安時代(808)にさかのぼります。15歳の慈覚大師が比叡山に登る途中、目黒で宿泊中夢を見た。「この地で国を鎮め、我を願う者は成就する」と言われた。夢の中の人物(=不動明王)を刻み安置したのが始まりで、堂を建立するに当たり、法具の「独鈷(どっこ)」を投じたところ、滝が吹き出し独鈷の滝と言われる。寺名の元となり、未だ枯れたことはない。
 JR目黒駅及び区名はこの目黒不動からきています。

 三代将軍家光公の加護により、「目黒御殿」と言われるほどの華麗さを誇った。正に現代においても敷地の広大さやお堂や付随した建物の立派さは目を見張るものがある。古道具市やフリーマーケットも開かれ、参拝する信者の数も多く、参道や門前町も華やいだ雰囲気を醸している。境内の独鈷の滝も偽り無く水を拭きだしていた。

 近くに「五百羅漢寺(目黒区下目黒3−20−11)http://www.rakan.or.jp/」や落語「永代橋」で紹介した「海福寺(目黒区下目黒3−20−9)の慰霊塔」も有り、ぜひ見学をお勧めします。
 五百羅漢寺については、落語「五百羅漢」で詳しく書く事にしましょう。

地図

  地図をクリックすると大きな地図になります。 

写真

それぞれの写真をクリックすると大きなカラー写真になります。

谷中の感応寺(台東区谷中7−14−8)、
現在 護国山天王寺(台東区谷中7−14−8)と名称変更されている。谷中墓地のはずれに位置し、JR日暮里駅の脇にある。クリックした写真、左側の平屋造りの建物が本堂。清楚な感じで好感が持てるお寺さんです。
湯島の天神湯島天神、文京区湯島3−30−1)
湯島天神の入り口の門飾り。梅の紋と牛の飾りが付いている。相変わらず境内は若い受験生で混んでいます。
目黒の不動(=龍泉寺、目黒区下目黒3−20−26)
関東最古の不動霊場と言われるに恥じない、堂々としたお寺さんです。暮れだというのに、人出もかなりあります。
左の写真は山門。クリックした写真は本堂。
年末特別付録 ”七福神”
宝くじを買うにはいろいろな迷信を担ぐものですが、ずばり当たる方法があります。これをプリントアウトして枕の下に敷いて翌日買うべし。ユメユメ疑うことなかれ!年末ジャンボはいただき。
この夢を見たら迷わず宝くじを買うべし!

2001年12月記

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